2013年2月25日月曜日

不信が高じれば高じるほど、全体としてより高コストになるだろう<元検弁護士のつぶやき>

国選弁護報酬不正請求

国選弁護:岡山の弁護士が報酬を過大請求 刑事告訴も
国選弁護:報酬過大請求、制度の根幹揺るがす…法テラス
国選弁護:報酬過大請求、背景に引き受け弁護士の不足(いずれも毎日jp)

 国選弁護報酬の引き上げは、弁護士会の長年の課題です。
 ほんの少しずつ改善されているような気はしますが、まだまだ絶対的に安すぎるというのが国選弁護をされている弁護士の実感だと思います。

 そこで、弁護士会は、

 国選弁護受任者は低廉すぎる報酬であるにもかかわらず、誠実に弁護活動をしている。
 しかし、国選弁護は赤字である。
 要するに国選弁護は(一部の)弁護士のボランティア精神で支えられている。
 しかし、それにも限界がある。

ということで、国選弁護報酬の増額を要求しているのですが、今回のような事件が起こりますと、どうせみんな不正請求をしているんじゃないのか、という憶測が生じてしまい、増額請求運動に対して思いっきり水を差してしまいそうです。

 この弁護士の責任は重大です。

 このような問題が生じることになったのは、被疑者段階における国選弁護が始まったからです。
 それ以前は、公判段階での国選弁護だけでしたから、国選弁護費用は裁判官が、法廷における弁護活動を見て裁判官が報酬額を決定していましたから、弁護士からの不正請求というのはありませんでした。

 捜査段階の国選弁護ですと、報酬額決定者から直接見えないところでの弁護活動が多くなりますので、いろいろ問題が生じる余地が出てきます。

 今回は接見回数が問題になったようですが、実は、弁護士が警察に接見に行ったときに、その事実を証明する書類は警察から渡されません。
 警察には記録が残りますから調べれば分かるのですが、弁護士に法テラスへ出すための裏づけ書類を要求するとなると、警察にそのような書類の発行を新たに求めなくてはならなくなります。
 少しかも知れませんが、手続的にはコストアップですし、たぶん警察内部では細かい規定の改正が必要になったりしてけっこう面倒な作業が必要だと思います。

 法テラス側としても、どの程度の手続を踏めば弁護士を信用していいのかという問題が生じます。
 警察が接見証明書のようなものを発行するにしても、弁護士がそれを提出したら信用するのか、弁護士の請求と警察が保管している書類との照合まで必要とするのか。
 とりあえず前者で十分だと思いますが、何が言いたいかといいますと、不信を前提とするシステムは不信が高じれば高じるほど、全体としてより高コストになるだろうという話です。
モトケン (2008年10月10日 08:53) | コメント(17) このエントリーを含むはてなブックマーク  (Top) 引用:国選弁護報酬不正請求 - 元検弁護士のつぶやき




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