2013年2月25日月曜日

「国民目線の広報必要」と言うけれど>検事総長殿<元検弁護士のつぶやき>

「国民目線の広報必要」と言うけれど>検事総長殿

「国民目線の広報必要」 裁判員制度に向け検事総長(産経ニュース)
裁判員制度へ向け、広報態勢充実(毎日新聞 2008年9月18日 東京夕刊)

 事件広報について、樋渡総長は「従来はマスコミに対し、謙抑的に終始してきた嫌いがあり、国民に検察の活動を分かりにくいものとしてきた側面も否定できない」と指摘。捜査の秘密などは厳守しつつ「例えば起訴・不起訴処分の理由、裁判における争点などについて、踏み込んで丁寧に説明することは十分可能。真摯(しんし)に検討してほしい」と述べた。(産経ニュース)

 一生懸命リップサービスに努めておられるようですが

 起訴の理由について述べるとすれば、起訴の根拠となった証拠に基づいて述べることになると思いますが、その証拠の信用性があるとは限らず、将来の公判における弁護活動によって証拠能力(証拠にできる資格そのもの)や信用性が否定される可能性が常にあります。
 起訴直後に起訴の理由について不用意に述べれば、裁判員制度を前提にした場合、裁判員に対し不当な先入観念を与えることになりかねません。

 不起訴の理由を述べることについてもかなり深刻な問題が生じる可能性があります。
 わかりやすく痴漢事件を例にあげますが(痴漢事件の不起訴について記者会見をするかどうかはともかく例としてあげます。)、不起訴の理由として被害者の供述の信用性について疑問があるなどと言えば、最近のでっち上げ事件が連想されて、被害者が被疑者を陥れようとしたのではないかという疑念が生じかねません。
 証拠が不十分だと言えば、被疑者は本当はやっているんだけど証拠が足りないだけなんだなと世間的クロ認定をされてしまう恐れもあります。

 このように、「踏み込んで丁寧」な説明をしようと思うと、思いっきり神経を使いますし、下手な説明をすれば関係者の名誉等に重大は被害が生じる危険性があります。

 原則として各地検の次席検事が当たってきた報道対応については、現場の主任検察官にも担わせる考えを示した。(毎日新聞)

 こんな微妙な問題がある説明を不慣れな主任検事にさせていいんかいな、という素朴な疑問が生じます。

 これまで検察はものを言わなすぎだったことは確かだと思います。
 法曹三者の中で、裁判官と弁護士というのは、その資格を聞いただけで仕事の内容がかなりの程度イメージできますが、検察官の仕事というのはなかなかイメージしにくいと思います。
 単に、事件を起訴する怖い人くらいのイメージじゃないでしょうか。
 または刑事とほとんど混同されていたりして。
 その意味では広報の必要性は感じますが、そのやり方についてはよくよく検討したほうがいいと思います。

 国民目線というのは、検事総長がイメージしているようなものばかりではないと思いますので。
モトケン (2008年9月18日 20:15) | コメント(2) このエントリーを含むはてなブックマーク  (Top) 引用:「国民目線の広報必要」と言うけれど>検事総長殿 - 元検弁護士のつぶやき


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